ヘルベルト・フォン・カラヤンの「音量」

以前声楽の師匠から聞いたエピソード。

あるフルートコンチェルトを演奏することになったときの練習でのこと。
フルートはオーケストラ楽器の中でも音量の小さい楽器だと思うのです。
それがあのオーケストラの前に立ってコンチェルトを演奏する。どうしてもオーケストラの音の中にソロ楽器のフルートの音が埋没するのです。
そのときカラヤンがオーケストラ全体に言ったそうです。
「これはフルートコンチェルトであり、ソロ楽器の音は常に聞こえなければならない。それを楽器の音が小さいからオーケストラの音に負けてしまうのだと思っている君たち。今すぐに君たちの考え方を改めなさい。ソロ楽器のフォルテ(大きい)が聴こえる音量がオーケストラのフォルテ、ソロ楽器のピアノ(小さい)が聴こえるのがオーケストラのピアノである。」

ま、言葉は違うけれどこんな意味でした。
アンサンブルをするときに間違ってはいけないのは
ソロの楽器だけのボリュームだけでフォルテ、というのはありえないということ。
アンサンブル全部の楽器でのフォルテ、ピアノ、という音量を考えなさい。
というカラヤンの教え。

私の場合、ピアノとのアンサンブル。
なので声だけでのフォルテ、ピアノだけでのフォルテはありえない。
歌とピアノでフォルテの音量、歌とピアノでピアノの音量を考えなさい、と教わったときのエピソードです。
リートは最小アンサンブルですからね、最大アンサンブルのオーケストラを師匠は例にとったようです。

わたしはそれはそれはつたない歌い手なので声のヴォリュームはありません。
ピアニストさんに申し訳ないなぁと思うことが多いわけです。
どうしたって私に合わせてボリュームを絞ってもらうことが多いから。
でも現在のピアニストさんはとても優れたピアニストさんなので
「音量を落とすのは簡単。抑えればいいだけだから大丈夫。」とおっしゃってくださるのね。

そんな彼女がパートナーさんだと大きい声より
いい発声でいい響きで会場を満たそうね、って思えるの。

音のボリュームで考えたらオーケストラに勝てる楽器はないんだし、
ピアノに勝る音量の楽器なんてないんじゃないかしら?
大きい音より、いい響きで通る音のほうが、音楽のニュアンスを表現するのには適していると信じているのです。
そうじゃなきゃ、声やヴァイオリンは絶対ピアノに負けちゃうもの。
そんなことないでしょ?

アンサンブルでピアノが絶えず前に出てうるさく感じるとしたら
それはピアニストが「音を抑える」というテクニックがないか、音楽を考えていないかのどちらかしかないのではないかと考えます。
テクニックがないのであればいたしかたありませんが、音楽を考えていないのならたちが悪い。
アンサンブルが成立しませんから。
ピアニスト選びは本当に大事。
ピアニストさん次第で楽曲の仕上がりがぐぐんと違うのはみんな知っているとは思うけど、人間関係の諸事情で自分でピアニストさんを指名できないときもあるみたいですね。
それこそ大人の事情で音楽がうまくいかないのは気の毒にと思ってしまいます。

現在私はとーっても贅沢で身分不相応なことをしています。
芸大首席で卒業して国費留学までしているピアニストさんで歌っています。
もうどれだけ感謝しても足りないぐらい、贅沢な環境で歌っています。
かたやわたしより歌の上手な人が、とっても稚拙なピアニストさんで歌っていたりもするのです。
その演奏を今のピアニストさんと一緒に聞いて、改めてなんてわたしは贅沢な環境で歌っているか思い当たって改めて御礼を言ったら
「みるてさんは私を選んでくれたんだから、それはみるてさんの実力。あのピアニストさんでうたうと決めたのはあの歌手さんの実力。それだけのことだよ。」
といってくださったのね。
パートナー選びもその演奏家の実力である、と言ってもらってとても嬉しかったの。

それ以後とてもソロはいいのに、ピアノがつまらなかったりすると、
このピアニストを選んだソリストの実力ってこの程度か って思うようになっちゃいました。

何が言いたいのかわからなくなってきちゃいましたが
ピアノが絶えずソロ楽器より前に出ていたとするなら、ピアニストのテクニック不足か、勉強不足か、それこそ自己顕示欲だと思うというお話。

それにしても大きい音がいい音楽っていう神話はやくなくなりませんかねぇ?
こんな神話がはびこっているから
某歌手は日本では最後の盛り上がりであらん限りの大声を出せば他がだめでもブラボー我来るからそう歌えと後輩を指導したとか。
大きい声、大きい音はいらないから、いい音楽を演奏して欲しいと思うのでありました。

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